カラフルなマットの修理

自分の感覚を信じる大切さ

Repairing Colorful Mat 05

 

カラフルなマットの修理をしなくちゃ!

刺繍糸がすり切れている!?

2018年11月のある日にふとカラフルなマットを見ると、いつもと何か違うように感じる部分が目に留まりました。

この写真の中にあるのですが、どこだか見えますか?

Repairing Colorful Mat 01

 

 

そう、おかしいなと思ったのは、写真中央より下のサツマイモ色のダブルクロスステッチの部分です。

よく見てみると、糸がすり切れているではありませんか!

Repairing Colorful Mat 02

 

 

マット全体を見渡すと、同じサツマイモ色の糸のところだけがほつれていることもわかってきました。

サツマイモ色の糸はほつれやすくなっていたのでしょう。

放っておいたらほつれがどんどん広がるだけですし、ずっと気になります。

時を得た一針は九針を省く(今日の一針、明日の九針)」とも言いますし、さっそく修理に取り掛かって、気になる時間を少しでも短くしましょう。

そして心地よく過ごしましょう。

 

人が製作した作品に手を入れることは、怖いものがあります。

どうか修理に成功して、マットの元のよさを壊すことなく、よりよい状態へ進化させられますように、と願うばかりです。

新しい色選び

さて、肝心な問題はどんな色の糸で修理するかです。

は色のセンスがあるとは言えないので、カラフルなマットの製作者であり、色選びが好きな伊都に尋ねてみることにしました。

すると伊都は、元のさつまいも色と同じ色の系統でこんな色はどうかと示してくれました。

Repairing Colorful Mat thread 001

 

 

いちごミルクのような甘いピンク色と、パッションがみなぎるような赤です。

これはパンチの効いた明るい雰囲気がマットに加わりそうな予感です。

ほつれた刺繍糸をほどく

糸の色も決まったことなので、同じサツマイモ色を全部取り除いて、新しい糸で縫うことにします。

最初にほつれた糸をすべてほどいていきましょう。

実は糸をほどくというのは、ステッチをするより時間がかかります。

なぜなら糸が割れていたり、使っているうちに糸同士が絡み合っていることがあり、複雑になっているからです。

ここは根気強く丁寧に、元の糸を取り除く必要があります。

よいしょ、よいしょ。

Repairing Colorful Mat 04

 

 

30分くらいかかって、ようやく全部取り除くことができました。

 

サツマイモ色のステッチの一番左の端の部分はちょっと糸が残っていますが、
マットに残す刺繍糸とからまっていたので、これ以上無理をして引っ張りださずに、新しい糸で色を隠すことにします。

 

Repairing Colorful Mat 03

 

 

新しいダブルクロスステッチ

ほぼ全部糸を取り除いたら、選んでもらっていた色で、新しくダブルクロスステッチを刺していくことにします。

糸は6本どりでボリュームがあるので、糸がふんわりとなるように仕上げたいところです。

しかしすでにマットの裏張りをしているので、
通常通りひと目ごとに糸を最後まで引き出して、糸の力加減を調整することはできません。

二目を連続して針ですくうことになります。

この方法は力が入って糸が引っ張られやすいので、力加減に注意する必要があります。

 

Repairing Colorful Mat 05

 

 

一つ目の修理が終わった箇所がこちらです。

うーん、力を入れないようにしたものの、元からあるダブルクロスステッチよりも黒地の部分がやや広く見えます。

ちょっと力が入りすぎて赤い糸が引っ張られたかなという感じが出ています。

 

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糸をふんわりさせるのは難しいなぁと、このとき改めて感じました。

 

二か所目の仕上がりが、こちらです。

先ほどよりも糸を引っ張らないようにゆとりをもたせて刺していきましたが、
やはり伊都が刺した目よりも黒地の見える部分が広いです。

 

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修理をしていると、伊都はどのくらいゆったりとした力加減で刺していったのだろうと、今までは気づかなかったことが見えてきます。

 

そして修理が終わった全体像がこちらです。

今回の修理では三か所手を入れました。

どこかわかりますか?

 

Repairing Colorful Mat 08

 

 

よく驚かれるのですが、このカラフルなマットは実際に使っています。

部屋の中でも太陽光によって色は少しずつ褪せていきますし、
日陰干しとはいえ洗濯もするので、その影響で色あせが徐々に進みます。

その淡くなった色の中に鮮やかに見える赤のラインが、今回修理した箇所です。

情熱が注入されたみたいに、マットが若返ったような気がして、見ているとなぜかどきどきします。

カラフルなマットが伝えようとしていること

マットの修理中は、当然のことながら、このマットがいつもある場所にはありませんでした。

いつもあるものがない時、そのことをよく考えるようになるものですが、
蜂も御多分にもれず、カラフルマットのことを考えていました。

このカラフルなマットがいつもの場所にないと、蜂はさみしくてたまらなくなっていました。

ということは、もしかすると温かみを醸し出しててくれたのもしれません。

偶然出来上がった作品

カラフルなマットは、伊都が余っていた手持ちの刺繍糸を使い切るために作った作品です。

もとは現在のように往来の真ん中にあったのではなく、伊都の家の奥の薄暗い部屋の入り口に敷いてありました。

捨てられそうになったカラフルマット

あるとき伊都がカラフルなマットを捨てようと袋に入れていて、
既の所で平次がその様子に気がつき、カラフルなマットを救い出したという経緯があります。

カラフルマットが捨てられそうになった理由

カラフルなマットを捨てようとした理由を伊都に聞くと、
「(カラフルなマットは)適当に刺したものだからいいものだとは思えなかった」とのことでした。

伊都は自分の内から沸き上がる感覚とアイディアにしたがって作ったマットに、良さを感じられなかったのです。

実は伊都らしさがたくさんつまった宝箱だともいえるのに…。

マットにつまっていた伊都らしさとは

のちにカラフルなマットは、針と糸仕事をあきらめようとしていた伊都を救うことになります。

 

そしてこの作品から、伊都は自分は色選びが好きなことに気づきます。

色選びが好きなことに気づいた伊都は、
その後パッチワーク柄のクッションの図案を選び、色を自分で選んだり、他の作者の色遣いを学んだりするという方法を試し始めました。

 

すると、いろいろな色の組み合わせを楽しむことに呼応してくれた人が現れ、
その後の伊都に創作の並々ならぬ情熱を注いでくれたという出来事がありました。

伊都は色選びが好きという自分らしさが、世界につながることを体感した瞬間でした。

大切なものはとても近くにある

その人らしさという宝箱は、人生の中で繰り返し現れる模様のようなものです。

どうしてもしたくなる何か。

自然に動いてしまう動き方。

そう考えたとき、自分らしさという宝箱はとても近くにあって、
見慣れているから自分では価値がないと思っているものの中にあるのかもしれません。

自分の人生の中で繰り返し現れる動きに気づき、大切にできることが、
自分を信じるということ、すなわち自信持つということなのではないかなと思うのです。

(別の機会に、自信がもてなかった蜂が変わり始めたきっかけをお話したいと思います。)

カラフルなマットがバージョンアップ

カラフルなマット製作当時の色に、鮮やかな赤が加わりました。

どことなく新しい情熱がマットに宿ったように感じます。

これはもしかすると、自分をもっと信じて、もっといい作品を生み出していこうねというエールなのかもしれません。

そうしているうちに、いい仕事が関係しあったり、刺激しあうことが起こるのかもしれません。

 

修理を終えて元の場所にマットを戻すと、これまで通り、ランプのような温かみを醸し出しています。

今、カラフルなマットは静かに人の往来を見守ってくれています。