蜂の夢 -関係性が人とコミュニティと世界を癒す-

地に足がつきつつも、冒険の要素を含んだ夢を語る人は輝いていて、他の人の魂を揺さぶります。

何かが行き詰まった時にそこから抜け出すよい方法は、夢をもっと頻繁に深く見ることです。

そのようなことを改めて考える機会があったので、今回は夢についてお話ししたいと思います。

メンバーの蜂がビーレエションシップが始まる10年前に見ていて、今のビーレエションシップにつながる夢についてのお話です。

 

小さな夢の種

ビーレエションシップが始まる前の2006年に、蜂の頭の中にある夢が広がっていました。

その夢とは、人生の光と影に寄り添う場を街の中に作る、というものでした。

人生の光と影に寄り添う場というと当時の蜂にとっては、カウンセリングの場が思い起こされました。

どうしてそれを街の中に作ると思ったのでしょうか。

 

蜂の夢の背景

蜂は当時、臨床心理学を専攻する学生で、心理学という世界の入り口にようやく立ったところでした。

なにせ蜂は小学生の頃に図書館でフロイトの本を偶然開いてから、心理学の世界をずっと夢見てきたのですから、わくわくせずにはいられません。

大学でカウンセリングの理論を学んでは、来談者中心療法の流れに自分がいることを学び、
事例を読んでは、体じゅうのあらゆる感覚が呼び覚まされた状態になって、”自分がセラピストならどうするだろう?”と夢中になって考えていました。

実習の機会にも恵まれ、中学校や施設を訪問したり、幼稚園児や小学生のいる場所で働く機会を得たことで、
成長段階に特有の悩みや、家庭環境の違い、個人と接するか集団と接するかの違いを肌で学ばせていただくことができました。

もうひとつこの時期のインパクトの大きかった学びは、
自分自身がクライエントとなり、大学の授業の外で実際にカウンセリングを受けたことでした。

授業で理論を学べば学ぶほど、蜂の中の本能的な勘が、自分がクライエントになれと言っている気がしたのです。

とはいえ、自分を開くことができる先生に簡単に会えたわけではありません。

まずは身近にあった大学内の相談室を訪れてみたり、医療分野である精神科のドアをたたいてみたりしたものの、
「この先生では私が願っているところまではたどりつけない」とクライエントとしての勘がいい、
自分が思い描いたような世界は遠いところにしかないのではないか、と途方に暮れたこともありました。

確かにその時の蜂のすぐ周りには、そうした世界はありませんでした。

でもまだ気づいていないところにはちゃんと存在していたのです。

探しに探して、やがてある臨床心理士の先生と出会うことができました。

その先生は心理学としての人間科学的なアプローチを用いつつも、精神性も対応できる先生だったのです。

その出会いによって、蜂の世界に光が射してきました。

その先生とのカウンセリングは4年に渡って続けられたのですが、
自分を奥深くまで見つめる体験は、自分の人間としての器を作る時間でもあり、
カウンセラーとしてどんな方法が合うのかを見つけ始めた経験となりました。

中学生の頃に「ソフィーの世界」という本を読んで、「あなたは誰?」という問いに魅了されて以来、鏡を見ながら自問自答したことがあるくらいですから、大人になって臨床心理士の先生に見守られながら自分の奥深くまで旅することができるカウンセリングの時間は、魂に栄養を行き渡らせるような、苦しくも夢のような時間となりました。

またカウンセラーとしてどんな方法が自分に合っているだろうかと考えたとき、
当時の心理学の世界ではタブー視されつつもアウトサイダーの立ち位置で少しずつ芽を出し始めていた、精神性を話題にすることができる方法を外すことは私にはできないという確信をもつことができました。

ただ、そうした方法をどこで学べばよいのかという疑問は残り、そもそも思い描くような方法はあるのかも知らなかったのですが…。

あぁ、蜂は一体どうするのでしょう?

 

個別カウンセリングは持続不可能?

蜂が自分の道を探し当てる前に、カウンセリングの制度上の課題も20代の経験の中から見えてきました。

まずカウンセリングは保険が効かないのが日本の現状です。

それはつまり、精神的につらい状況が続いたときにセラピストと話したいと思えば、一時間1万円強の費用を全額支払わなくてはならないということです。

蜂には忘れられない話があります。

カウンセリングに勇気を出して通い出した人が、経済的な理由からカウンセリングを中断してしまった話を聞いたのです。

このとき、持続可能な心と向き合える仕組みができていないのはどうしてだろうと、歯がゆく感じたのです。

このような状況では、経済的ゆとりのあるときしかカウンセリングを受けることはできません。

どうして風邪をひいたときに保険適応で受診することができるのに、心の暗闇から抜け出せなくて苦しい時に、保険適応で受診できるのは精神科だけなのでしょう。

もちろん精神科でよい先生や方法に出合えれば、それでよいのだろうと思います。

しかし蜂が経験した限りでは、精神科では薬を処方する対処療法が中心で、医師は生理学的な視点から人間の悩みを見つめ、
クライエントが根本から悩みを解決するために、心の内面を見つめるサポートは行われにくいように感じられました。

もう少し温かみのある雰囲気の中、持続可能な経済的負担で、心に向き合える場はないのだろうか。

心の状態が悪くなるまで待たずに、予防的に参加することで心の健康の増進を図れる場所はないのだろうか。

それがカウンセリングの世界に飛び込んだ20代の蜂の問いでした。

 

(2017年に、厚生労働省が公認心理師という資格を、国家資格として設立しています。

臨床心理士は難易度が高い民間の資格だったため、国家資格に認定されることが求められていましたが、その話がまとまることはなかったようです。

臨床心理士と公認心理師の資格維持条件の違いを見ていると、臨床心理士は定期的な学習による更新が求められるのに対し、公認心理師は一度取得するとそれが永続されるようです。

臨床心理士の資格更新は、確か河合隼雄さんが臨床心理士の質の確保のために提唱したものではなかったかと記憶していますが、これが取り除かれた公認心理師はどのような変化をもたらすのか注視しています。)

 

自己変革と社会変革

カウンセリング業界の状況に行き詰まりを感じていたとき、蜂は一冊の本に出合いました。

その本とは「がんばれ仏教! お寺ルネサンスの時代」です。

著者は文化人類学者の上田紀行さんで、蜂はトランスパーソナル学会で講演されていたときに知りました。

「がんばれ仏教!お寺ルネサンスの時代」は、著者の上田紀行さんが執筆のスランプに陥った後に出版された著書で、
本を書き上げることができたのは、お坊さんにご自身の話を聞いてもらっているうちに号泣し、自分の本が必要とされるかを気にするよりもこの人を紹介するために書こうと思えたからだそうです。

このとき蜂が感じ考えたことは、夢中になってこの記事に書き残しました。

(それを読んでくれた友人が、プリントアウトしてもう一度読み直したと教えてくれたことは本当にうれしくて、今でも勇気をもらっています。)

 

今でも、ここにビーレエションシップの理想がぎゅっと詰まっているように感じます。

カウンセリングでは用いられる技術の違いはあれど、カウンセラーとクライエントの関係を通じて、クライエントは次第に治っていくという原則があると思っています。

この関係性の中にある流れが核なのです。(ビーレエションシップの名前の由来もここから来ています。)

関係性の中にある流れが自ら癒る力を呼び起こすことを、蜂も自ら体験しています。

関係性の質を高める訓練をしているのがカウンセラーと言えるのですが、
そんな人たちがカウンセリングルームの中にいるだけでなく、街に飛び出していくとどんなことが起こるんだろう。

自分自身と深く結びついてそれを生きている人が街の中を歩き、迷ったり困っている人に出会い、
その人のエネルギーにそっと触れると、その人はなぜか元気が出てくるような人間関係の流れは生み出せないだろうか。

あそこに行けばなにか面白い人がいる、たくさんの関わり方があって自分に合うものを選べる、
生きることに絶望した日も、自分のペースと力で立ち上がるために、遠くから道しるべのように眺められる灯台のような場所は作り出せないのだろうか。

それが、この本を読んだ蜂の頭の中に浮かんだビジョンでした。

 

学ぶべきアプローチ

それが蜂の頭の中に植えつけられてしばらく経ったころ、”自己変容から世界変容へ”を可能としているアプローチに出合いました。

精神性を話題にすることができ、かつ科学的な視点と統合されている方法です。

そのアプローチでは、
「私一人の悩みは私だけのものではなく、
もし共有されると、他の誰か、どこかにも共通していることがわかるかもしれない。
悩みや問題の中には、次の一歩を見つけ出すことにつながる創造的な力が眠っていることさえある」
という考え方の提案がありました。

これを知った時、私の道は決まったと思いました。

心理学は好きだったけれど、精神性に対応できる科学的なアプローチが見つけられず、
またカウンセラーとして人生を染められるほど、ぴったりくるアプローチはないと思っていたところに、
考え方を何かに染める必要はなく、むしろ自然なままの考え方でよいと感じられ、
なおかつ思い描いていた夢への道しるべまでもがそこに示されていたのですから。

 

プロセスワークというアプローチを学ぶ中でビーレエションシップが生まれ、鍛えられた母性というテーマがビーレエションシップのメインテーマに加わっています。

 

夢の更新、20代から30代の夢へ

今も変わらず描いているのは、大きく次の2点です。

ひとつは、個々人それぞれがインナーワークを深めて見つけた夢を、外の世界で実現する流れをサポートすることです。

これにはインナーワークをサポートする方法と、社会の資源をつなぎ合わせる方法が必要です。

ビーレエションシップは関係性に関する情報や体験をご提供することはできますし、研鑽し続けてまいります。

しかし、実際の物や知識という資源はまだ足りていません。

またディレクターの蜂の中には、複数の役割がうごめいています。

ディレクター(何が起こっているか流れを特定すること)、経営者、心理学業界の人、執筆家、翻訳者、写真を撮る人、イラストレーター、システムエンジニア、ウェブデザイナー、家事をする人、子育て・教育システムの未来を作りたい人、刺繍をする人、編み物をする人、DIYが好きな人、お茶の時間が好きな人、などなど。

これらの役割を小さなチームで深くやり遂げることは難しく、より確かなネットワークを見つけていく必要があると思っています。

 

もうひとつは、夢を現実に現すことが可能となるビジネスモデルを作ることです。

アーツの記事にあるように、芸術のレベルまで磨き上げられた仕事なら、持続可能なビジネスモデルが作れる、
芸術的な域まで深められた人間関係は、取り替えることができないものになると信じています。

そして豊かで特徴的な体験を作り出すためには、設備が必要になります。

それに関わる人たちが生活できることも、持続可能な発展のためには不可欠です。

参加してくださる方が一生懸命働いて稼いだお金と交換してよかった、なにかが変わる気がすると思える体験を作りあげ、
共に良くなっていくための流れをビジネスモデルとして特定し、安定化する必要があると思っています。

これが蜂を突き動かしている、変わらない夢です。

 

あなたの夢を見つけて

そしてビーレエションシップから、厚かましくもお願いがあります。

あなたご自身の夢を見つけて、それと深く繋がって欲しいのです。

夢というのは意図して思い描くもののほかにも、
瞬間的に頭を通り過ぎることや、ふと口ずさむ歌、突然ふわっと湧き上がる感覚の中にも潜んでいます。

それは人生のほうがあなたに語りかけている夢であることが多いように思います。

 

どんな夢でつながっている?

あなたがご自身の夢と深く繋がり、
もしあなたと私たちの間にある何かに気づくことができれば、自ずと現実にもつながりが現れてくると思っています。

そうしたつながりは新しい世界を開く道具になり、持続可能な関係性の源になるような気がするのです。

 

フィードバック

いよいよ、穴だらけの風呂敷が大きく広げられました。

お気づきの通り穴だらけの風呂敷で、これからその穴を埋めていかなければなりません。

私たちビーレエションシップが変わらずにできることは、私たちの周りの関係性の流れの中で何が起こっているかを感じ取ることです。

ディレクターの蜂は色々な場所で寄せられる皆様からのフィードバックから、何が起こっているのかを感じ取っています。
(この文章も、確かにずっと頭にはあったのですが、文字に起こそうと思ったのは寄せられたフィードバックのおかげです。)

ですからあらゆる形でのフィードバックをいただけるととてもありがたいです。 

(ビーレエションシップとつながる方法はこちらです。)

 

 

 

ビーレエションシップを探検!